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Producer Interview Vol.5

村山晋一郎

村山晋一郎・・・その名前を聞いたことがある方も多いでしょう。音楽をある程度聞いて、クレジットなどを見たことがある方ならば、誰もが多くのアーティストの作詞・作曲・プロデューサーなどのクレジットにShinichiro Murayamaと書いてあるのを見たことがあるはずです!
その仕事は幅広くFull Of Harmony, Crystal Kay、HI-D、加藤ミリヤ、童子-T、松田亮治、など、R&B、HIPHOPを聞くリスナーならば、必ず目にしたことがあるプロデューサー名なのです!もちろんR&Bなどの一つのジャンルにとらわれることなく、宇多田ヒカル、平井堅などオリコンチャートに名を連ねるようなアーティストやアイドルまでもプロデュースするジャンルレスな活躍を昔からからしてきている、とても実績のあるプロデューサなのです。
Delightful Music恒例のインタビューシリーズ!Producer Interview第5段はその村山晋一郎さんとのインタビューをお届けします!幸運にも村山さんにインタビューを取る機会をいただいたのですが、ぜひ多くの方々に楽しんでもらいたいと思っています!村山晋一郎さんは先ほど述べたプロデューサーとしての実績も以外にも、現在は、シンガーとしても活躍しており、2006年にアルバム「軌跡」を出していて、Delightful Musicでも、レビューをさせていただきました。("たどりつくまで"は名曲です!)
村山晋一郎 / 軌跡
村山晋一郎 / 軌跡
Delightful Music Review
本当に去年を代表する一枚でした!このようにシンガーとしても、プロデューサーとしても大活躍していて、現在はUSに拠点を移して活動をされています。H.E.Gというプロダクションに所属し、USなどのアーティストとのプロデュース活動なども期待され、今後も期待されるプロデューサーです!
とても、気さくな人柄がよく出ているインタビューになっています!音楽への深い愛情と、造詣に溢れたインタビューとなっていますので、普段私のHPを読んでくださっている、リスナーの方々以外にも、音楽にか関わっている方々にも是非楽しんでいただければなと思います。
それでは、お楽しみください!
村山晋一郎 OFFICIAL MYSPACE
村山晋一郎 OFFICIAL BLOG
H.E.G(USでの所属事務所・・・更新)

Q1.御年齢と、代表作・現在の主な活動について教えてください。

「年齢は現在38歳。
代表作は自分のリーダー作品とクリエーターとして関わった作品全て。
現在の活動内容としてはプロデューサー、クリエーターとして作業に関わっている時間が最も多いですが、アーティストとしても更に充実した作品を出したいのでその準備も少しずつ進めています。」

Q2.プロデューサーの仕事をするきっかけは?そのために努力したことなどありますか?

「いろんなオーディションにデモテープを送ったりライブやコンテスト会場で歌ったりといったことを繰り返しており、10年程前にデモテープを評価してくれたポニーキャニオンさんのDNAという新人発掘チームからお誘いを頂きクリエーターとして新人開発のお手伝いを始めたのがきっかけです。
その後、作家事務所に所属してからは仕事の幅も広がりいろんなレコードメーカーさんと仕事をさせていただくようになりました。当時はまだ会社員で、ボーナスをはたいて自主制作CDを作ってプレスして配りまくって精力的に営業していましたね。また有給休暇を取ってレコーディングに参加したり、スーツ姿で勤務後にスタジオに入りカプセルホテルで仮眠して翌朝そのまま出勤したり、会社を辞めるまでは無茶苦茶してました(笑)。 」


まさに努力っていうか無茶してますね。体力ないとできませんね。両立は厳しかったでしょうが、普通の会社にいたという経験はその後役立ちましたか?

「非常に役に立ちましたね。企業セミナーやOJT、その後の実務で学んだビジネスマナーやコミュニケーションスキルといったことからお金の流れやペーパーワークの知識等そのまま現在の仕事に流用できる事ばかりでしたので、逆にそれらを知らずに今の世界に飛び込んでいたらと思うと恐ろしいです。大卒で世間知らずだった時にいろいろと叩き込んでくれた先輩達には未だに感謝してます。」

また、その頃の自主制作CDは今からしたら、お宝ですね!そのCDからこの前のアルバムに入った曲などはあるんですか?

「当時の安価な機材で全て自宅で制作した作品でしたのでクオリティーはシャレにならない程低いです(笑)。歌も情けなくなるくらい下手でしたし。それでも当時の地元の相模原で自分で営業して3店舗店頭に置いていただきました。そのアルバムからは4曲、1999年にポニーキャニオンさんから発売された「Beat Gallery Re-Mix」というミニアルバムにオケを差し替えてリミックスという形で収録されましたが残念ながら既に廃盤となっております。ただ話は飛びますがこのミニアルバムはコンビニのローソンさんがスポンサーに付いたボーカリスト・オーディションとタイアップしてて、そのオーディションから選出してデビューさせたのがカマDさんがごひいきのNEOさんだったりします。」

おぉ〜!そんな裏話が聞けるとはうれしいです!

Q3.現在使っている機材・環境など簡単に教えてください。

「ProToolsというパソコンを中心にしたシステムでほとんどの作業を行っています。とりあえず自宅アパートの一室を作業部屋にあてて作業を行っています。一時期はいろんな機材で溢れていましたが引っ越し時にほとんど処分してしまい現在はいたってシンプルです。エレキ、ベースも持っていますが今は実家に眠っています。」

ほとんどの楽器をそろえていたみたいですねー!すごい!やっぱりProtoolsなんですねー。

Q4.仕事内容的にプロデューサーといっても、トラックメイキングだったり詞だったりディレクションだったりと様々な仕事があると思うのですが。村山さん的にどのような仕事がプロデューサーの主な仕事だと思いますか?

「私の場合は原則的にアーティストの制作現場での実作業をサポートするというスタンスで行うことが最も多いです。曲も詞もアーティスト本人が書いたものが一番良い訳で、そうで無い場合は足りないものを補い、更になるべくなら期待されている以上のものを提供しアーティストやリスナーを喜ばすということに使命を感じております。
話が逸れるかもしれませんが、作業工程的なこと以外で客観的に自分を見ると他のR&B系プロデューサーさん達と比較して良くも悪くも商業アレンジャーとしての意味合いが強い関わり方をしている仕事が多い様に感じます。これは基本的にジャンルや音の趣向はどうあれ何かを期待してくれる人に対しては誠意を尽くすのが礼儀だという信念があって、要求に対して何事にも柔軟に対応するということを徹底している結果かと思います。時々自由度の高いプログラムを任されることもあり、思い入れも深くなったりもしますが、どの仕事も平等に大事にしているつもりです。あと決定的に他のプロデューサーと違うと思えるのは本物のR&Bにどこまで近ずける音を出すかということよりあまりR&Bにゆかりのないと思われているアーティストがR&Bに歩み寄るきっかけを提供できる機会が多いという点でしょうか。酒井法子さん、高橋真理子さん、工藤静香さんや松たかこさん等アーティストのイメージを崩さず、押しつけでもなく、リスナーにR&Bという新たなビジョンへのステップを提案できるという事は非常に有意義だと感じています。
もちろんこれによるマイナスイメージも付いて回る事があり、あまりにも広範囲にわたる活動で「何をやりたいの?」という疑問を生むこともあるかと思います。自分自身も納得していたり反省していたりもするので具体的な回答は音をもって次のソロアルバムでリスナーさんに提示するつもりです。」


村山さんのお仕事は確かに、本当にいろんな人とかかわっていますよねー。それでいて、R&B然とした曲もできるから凄いです。自身のスタンスというのは仕事とすると好きだけじゃないから、どんな仕事でもそれを楽しむっていうのは大事ですよね!
シーンの裾野を広げるには、そういう普通POPSフィールドのアーティストをR&Bに触れさせるって言うのは、とても有意義に感じます。 またシーンということで・・・普段は、顔の見えないリスナーの要望っていうのは、村山さんなりに、どのように吸収していますか?


「昔はチャートをチェックしたりライブやクラブ等で肌で感じるしかなかったと思うのですが、今ですとそれに加えネットの掲示板やコミュニティーサイト等でリアルな議論もされてますのでとても参考になります。」

Q5.プロデューサーの仕事で、どの仕事が一番好きですか?

「やはりどの作品も愛情を注いでいるので大好きです。ただFull Of Harmonyの「You & I」がリリースされた時は今までにない達成感と人生の節目の様なものを感じました。もういつ干されてもいいとさえ思ったほどです(笑)。また息の長いベテランアーティスト、例えばR&B的な要素は薄いかもしれませんが高橋真理子さん、広瀬香美さんや竹内まりやさんといった方々から声を掛けていただいてコラボレートできたのは非常に光栄な事です。鈴木雅之さんとはMSTという仮想ユニットまで組ませていただき感無量です。MSTはMasayuki、 Shinichiro、Tetsuo(AJIの橘哲夫)の頭文字を取ったもので鈴木雅之さんの作品のいくつかにクレジットされています。その他に、子を思う親心を書いた詞と曲を提供してアレンジ、プロデュースを行った平原綾香さんの「I Will Be With You」がセサミストリートのエンディングテーマになったことも子を持つ親としてとても意味のある仕事だったと思っています。 」
Full Of Harmony / You & I
YOU&Iはそのまま村山さんのアレンジのままの曲をFull Of Harmonyが歌ったんですよね?
村山さんにとっては家族って言うのものも一つの大きなテーマですよね。


「そうですね。ただ「You & I」は仮歌が英語だったのに対し日本語になったし、トラックもリズムトラック以外はほとんど生楽器に差し替わったのでだいぶデモからは雰囲気が変わってきてます。各生楽器の上品さがブレンドされてとても良いケミストリーを生んで歌を引き立てていると思います。ちなみに同じアルバムに収録されている「Harmony」は本人達が単に歌を差し替えた形に近いのでより私が楽曲を提出した際のデモにかなり近い雰囲気で上がってるんです。もちろん彼達は歌が上手いし彼達のオリジナリティーも加わってデモより歌の精度は遥かに上がっています。

そしてやはり家族は基本ですよね。それぞれの家族がハッピーじゃないと社会もハッピーになり得ないと思います。その辺の理念は「Harmony」でも書き留めています。」

Q6.プロデューサーをやってて喜びや、うれしかったことはありますか?

「とにかく末端のリスナーさんがいいコメントを残してくれたりするのをどこかで見かけたりするといつも舞い上がってしまいます(笑)。 」

Q7.豊富な音楽経験をお持ちだと思いますが、プロデューサという仕事をする上ではどのように役立つのでしょうか?

「まず楽器の演奏経験は重要だと思います。自分が満足に演奏できなくてもバックグラウンドの知識があるのとないのでは大分違ってきますね。打ち込みでも生楽器の演奏をシミュレートするのに役立ちますし、生楽器のレコーディング時にミュージシャンのディレクションを行う際にも敏速に的を得た指示が出せるようにもなれます。例えばエレキギターを多少なりともかじっていれば、レコーディング時にアンプ、ギター、ピックアップの種類の希望を出したり、ここではグリスを入れて欲しい等といった具体的なディレクションが出せて、イメージした音をすぐに形にできます。同様に基本的な音楽理論もあるに越したことないですね。音符はスラスラ読めなくても、とりあえずコード譜が書けないと生楽器のレコーディングがなかなか成立しないです。あと広い音楽知識でしょうか。 R&Bのプロデューサーになりたくてもそれ以外の音楽も一通り耳にしてみると世界観が広がりますよね。R&Bから離れていれば離れている程トラックメイキングの新しいヒントを得られたりもします。」

R&Bから離れたほうが、ヒントが得られるっていうのは、よくわかります。結構、最近も斬新といわれるアーティストやプロデューサーは、既存の音色やメロディーを使っているだけではダメですし。

Q8.大体一つの作品を作り上げるのに、プロデューサーの仕事としてどれぐらいの時間がかかるものなのでしょう?
「プログラムの進行具合によりますが、楽曲デモを作るのに1〜3日間、アレンジに1〜3日間、自宅でのオケの録音に半日、それ以降は外部スタジオに出かけて生楽器の録音があれば半日〜1日、ボーカルダビングに1日、ミックスに1日といった流れが一般的でコーラスの量が多かったりするとコーラスダビングだけでさらに1日追加されたりもします。ミックス作業は他のエンジニアさんにお任せする場合は終了予定時間に現場にお邪魔して数時間作業に立ち会います。ちなみに僕の自宅での作業は家事や育児が入り交じるので他の人と比べてかなり遅いと思います。逆にアレンジやリミックスの仕事で打ち合わせ後24時間以内に納品しなければならなかった作品もいくつかありました。スリル満点でシビレましたが(笑)。 」

24時間って厳しいですねー。達成したときは、もう自分の凄さに酔いそうですね。
エンジニアさんとプロデューサーさんとの関係っていうのも、興味があるのですが。 プロのエンジニアさんっていうのがいて、初めて音質とか、音楽の質の向上が見込まれると思うのですが、彼らの役割と関係みたいなのも、簡単に教えてもらえるとうれしいです。


「エンジニアさんのスキルやセンスはピンキリですね。レコーディングやミキシングエンジニアの他にマスタリングエンジニアの力による作品への影響も計り知れないです。私も良いエンジアリングに随分と助けられたり、逆に台無しにもされました。そしてR&Bをよく理解している方であればある程チームを組みやすい。もちろんそれ以前に歌とトラックや生演奏の質が良くなければ話になりませんが。」

Q9.大好きなプロデューサーは、そしてその人からどんな影響をうけましたか?

「大好きなプロデューサーを挙げるときりがないのでちょっと一癖付けたセレクトをすると、昔からセルフ・コンテインド系の歌えて楽器が弾けるプロデューサーに最も憧れていました。プリンス、ジョージ・デューク、歌は微妙ですが(笑)マーカス・ミラーやテディー・ライリー。もちろんラフェル・サディークやベイビー・フェイスも。プロデューサー自身による実演や歌が含まれているという要素が結構好きだったりもします。」

アーティストとしても、プロデューサーとしても活躍できるタイプですよね。 村山さん自身の目指すところでもありますね。

Q10.最近は、パソコンでのトラックメイキングが当たり前のものとして、普及していますが、どの点で、手軽さ便利さなどは感じますか?その利点・悪い点などありますか?

「パソコンの画面だけで素早く操作できて、目的の音が簡単に検索できて、スペースも取らずに、値段も安くてといった部分では多いに利点がありますが、音質的な部分ではあくまでもアコースティック楽器やビンテージシンセやエフェクターのシュミレーションでしかないので、やはり本物にはかないません。」

なかなか値段的には、ちらっと調べるとソフトでも、結構しますが、楽器はその倍はしますもんね。やっぱり楽曲作りを突き詰めていくと、どうしても音とその音源の値段との交渉的な部分もでてきますが・・・その辺はやりくりされたりとかはありましたか?

「自分の場合は生楽器の演奏が下手で(笑)どうしても打ち込みによるデータの再現性が必要不可欠なので、あれこれと手を出したもののどっちみち高価な楽器を購入したところで宝の持ち腐れになってしまうことを学んだので最近は始めからソフトの購入に走ってしまうことが多くて。反省点でもあるのですが、最近はそれより歌のパフォーマンスを上げることに時間を割きたいのでますます楽器は弾かなくなってしまいました。こんな状態で偉そうな事を言える立場ではありませんが、若いクリエーターさん等には是非本物の楽器やエフェクターを一度は手にされてシミュレートしたソフトとはどの様に違うのかということを理解した上で便利なソフトを使われることをお薦めしたいです。必ず一つや二つコストや利便性よりも音の魅力を追求したくなる楽器が存在すると思います。」

Q11.村山さんは、楽器へのこだわりも、非常に強いと思うのですが、サウンドメイクする上での、楽器へのこだわりなどがあれば、聞かせてください。
「実はだんだんとこだわりがなくなってきました(笑)。というのは半分冗談ですが元々ドラムとベースの音さえ良ければそれ以外の音質は結構無頓着だったりします。ただピアノ、エレピ、アコギ、ストリングス等の楽器の音質は良ければ良い程いいので新製品のプラグインソフトが発売されるとすぐ気になって試してみたりします。」

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